はじめに
「AI時代はエンジニアが不要になる」
「プロンプトを書けば誰でも開発できる」
こんな話を聞いたことがありませんか?
実際にAI開発ツールを半年以上運用してきた私たちの結論は、むしろ逆でした。
AIは確かに強力ですが、それを使いこなすには従来以上にエンジニアリング力が求められるのです。
今回は、Claude Codeのプランニング機能を例に、なぜAI開発においてエンジニアの基礎力が重要なのかを考察します。
Claude Codeのプランニング機能が示すエンジニア力の重要性
プランニングで分かる「自分で書けるレベル」の重要性
Claude Codeには興味深い「プランニング」機能があります。
この機能は、実装を始める前に詳細な実装計画を立てるものですが、ここで重要な発見がありました。
効果的なプランを得るためには、エンジニア自身が「自分でコードを書けるレベル」まで要件を理解している必要があります。
つまり、AIに実装を依頼する前に、人間がその実装の詳細を把握していなければならないのです。
曖昧な指示では良い結果は得られない
「ユーザー認証機能を実装して」という指示を例に考えてみましょう。
この一文だけでは、AIは多くの判断を推測で行うことになります。
• 認証方式はどうするのか
• セッション管理はどのように行うのか
• エラーハンドリングはどの程度厳密にするのか
• セキュリティ要件はどこまで考慮するのか
これらの詳細が不明確なまま実装を進めれば、後から大幅な修正が必要になることは容易に想像できます。
なぜエンジニア力の差がより顕著に現れるのか
AI時代でも変わらない本質
「AI時代においても、エンジニアの設計力や判断力が成果物の品質を大きく左右する」というのが実情です。
なぜなら、AIは「コードを書く部分」を加速してくれますが、何を作るべきか、どう設計するべきかという判断は依然として人間が行う必要があるからです。
知識格差が拡大する理由
「知識がなくても開発できる」のは半分本当で、半分は「エンジニア力が高いか低いかでアウトプットされるものがより顕著に出る」のが現実です。
エンジニアリング知識の習熟度による違い
習熟度の高いエンジニアの場合
• AIに適切な指示を出すことができる
• 生成されたコードの品質を正しく評価できる
• システム全体を見据えた設計判断ができる
習熟度を高めている段階では
• 指示が曖昧になりやすく、期待と違う結果になることがある
• 生成されたコードの適切性を判断する経験を積む必要がある
• システム全体の最適化よりも部分最適になりやすい傾向がある
AIによる「加速」の効果
AIツールは確実に開発を加速しますが、この加速効果は元々の能力に比例します。
優秀なエンジニアほど、AIツールから得られる恩恵も大きくなるのです。
良いコードの定義は変わらない
「ドキュメントのように読める」コードの重要性
「良いコードとはコードを読めばドキュメントを読んでいるかのような感覚で仕様が把握できる」ものです。
この定義は、AI時代になっても変わりません。
むしろ、AIが大量のコードを生成する時代だからこそ、可読性と保守性の重要性は増しています。
AIが生成するコードの品質判断
AIは「動くコード」を生成することは得意ですが、そのコードが以下の観点で適切かを判断するのは人間の役割です。
• 可読性 - 変数名や関数名が適切か
• 保守性 - 将来の変更に対応しやすい構造か
• 拡張性 - 新しい要件に対応できる設計か
• 効率性 - パフォーマンスを考慮した実装か
これらの判断基準を持っているかどうかが、AI時代のエンジニアの価値を決める重要な要素になります。
コードを書く力から設計力への変化
エンジニアに求められる能力の変化
AI開発の普及に伴い、「エンジニアはコードを書く力よりもどういう設計をするか、どういうロジックを組むか、により重点を置く必要がある」と感じるようになりました。
設計力が重要になる理由
AIがコード生成を担うようになった今、エンジニアの価値は以下の領域により強く現れるようになりました。
• システム設計 - 全体のアーキテクチャをどう構成するか
• ロジック設計 - ビジネス要件をどう技術的に実現するか
• 品質判断 - 生成されたコードが要件を満たしているか
• 将来性考慮 - 拡張や保守を見据えた設計になっているか
従来は「コードを書く速度」が重視される傾向がありましたが、AI時代では「適切な設計を考える力」がより重要になってきていると感じています。
この変化により、エンジニアはより創造的で価値の高い仕事に集中できるようになる一方で、基礎的な設計力の習得がより重要になると考えられます。
まとめ:AI時代だからこそエンジニア力が重要
AI時代においても「エンジニアの設計力や判断力が成果物の品質を大きく左右する」というのが現実です。
重要なポイントの再確認
1. 効果的なAI活用には「自分で書けるレベル」の理解が必要
2. AIによる加速効果は、元々のエンジニアリング力に比例する
3. 「コードを書く力」から「設計・判断力」への能力転換が求められる
4. 良いコードの定義(ドキュメントのように読める)は変わらない
AI時代のエンジニアとして必要な姿勢
AIツールの登場により、エンジニアはより本質的で創造的な仕事に集中できるようになりました。
単純にコードを書くだけでなく、「何を作るべきか」「どう設計するべきか」を深く考える能力が求められます。
本質的な価値を追求する
技術は進歩し続けますが、問題解決の本質や設計の原則は普遍的です。
AI時代だからこそ、これらの基礎的な力を磨き続けることが、長期的な成長につながります。
AIを「楽をするためのツール」として捉えるのではなく、「より良いソフトウェアを作るためのパートナー」として活用していくことが重要ではないでしょうか。